うつ病当事者目線の本「うつヌケ~うつトンネルをヌケた人たち~」(田中圭一著・角川書店)

2017.07.05スタッフのつぶやき

こんにちは。スタッフの鈴木です。今日はスタッフから借りた「うつヌケ」という本をご紹介させていただきたいと思います。

 本屋で気になっていた本だったのですが、隣に座っているスタッフが持っているということだったので、早速借りて拝読。

 実は私も8年前に入院手前までいくほどのうつ病に苦しんだ一人です。引き金は仕事の多忙さで毎日2時間ほどしか睡眠が取れていない状態を2年ほど放置していたのが、大きなきっかけとなりました。ある日突然、文字が頭の中に入らなくなったり、突然過呼吸に襲われたり、料理をしていたのに段取りを忘れて火をかけたお鍋の前で呆然と立ち尽くす…という症状に襲われていました。死にたいということではなく、ただただ消えてしまいたいとそればかり毎日考えていました。

 そうした経験を踏まえると、本当によく表現されている本だなあと驚きました(当事者の方々のお話なので当然でしょうが、そのまとめ方がとてもうまい!)。特に突然やってくる不安やうつ症状をスライムみたいな生き物が身体の上に乗っかってくるイラストは「分かる!」という一言に尽きます。画像の表紙で主人公が持っているぬいぐるみみたいなのがそうですね(笑)

 

 そして、この本の中にも書かれていましたが、「うつは心の風邪」という言葉が流行りましたが、とんでもないことです。私も「うつは心のガン」「うつは心の難病」であると思います。風邪の人に「ちょっと頑張って出ておいで」と言えても、ガンの人に「ちょっと頑張って出ておいで」とは言えませんよね。「ゆっくり休んでね」という言葉が出るのではないでしょうか。こうした単純な世間のイメージが本人も周りも苦しめてしまうんだなと改めて感じました。

 さて、私が「うつトンネル」を抜けたきっかけですが・・・

  • 病気の前の自分に戻ろうとすると苦しくなる。今から新しい自分を作り上げていくしかないんだという開き直りと、以前の自分への決別。
  • 自分は思っているほど丈夫な人間ではないし、一人でなんでもできるほど有能ではない。だから困ったら周りを信頼して頼っていこうという、これもまた、開き直り。
  • 過干渉気味だった母親との決別(今はとても仲が良いですが、ある意味、これが本当の自立だったのかもしれませんね)そもそも私が頑張りすぎて働いてしまうのは、家族に認められたいという思いが人一倍強いことに気づきました。
  • 疲れたら、疲れたと言って休む!

ということが、頭だけではなく、心の底から思えたあたりからフッと楽になったように思います。恐らく、自分のことを客観的に眺められて、それを納得したんでしょうね。

 当時の記憶はあまり覚えていないということもありますが、それでも何もできない自分にショックを受けた記憶は強烈に残っています。そして、今でも難しい本や字が細かい本を長時間読むことはできません。私は本が大好きだったので、これはとてもショックでした。今でも、そうした感情の記憶がふと顔をのぞかせる時もあるのですが、無理にそれを消すのではなく「まあ、しょうがねえな…ヘタレだから…へへへ」と言いながら、あの時打ちのめされた自分もひっくるめて一緒に生きているような状態です。

私が発症してから、トンネルを抜けるまで4-5年ほどかかったでしょうか。それは長い時間だったと今でも思います。しかし、あの時に苦しんだ自分と向き合わなければ、今こうして自然体の自分で生きてはいられなかっただろうと思うと、無駄な日々ではなかったのかなとようやく思える今日この頃です。

今、苦しんでいる人も、私のようにトンネルを抜けた人も、うつ病の方が身近にいる方も読むと新しい発見がある本ではないかなと思いました。ぜひお手にとってみてください。

 そうそう、復職するのもとっても苦労しました。それはもう苦労しました。それはまた別の時に書いてみたいと思います。

 たまにはご自身の心の動きや疲れた自分にご褒美をたっぷりと。特にこの季節は乱れがちになりますので、どうぞお身体と心もご自愛くださいませ。

それでは!