『置かれた場所で咲きなさい』(渡辺和子著・幻冬舎)

2017.08.23スタッフのつぶやき

松戸就労準備担当の青木です。

ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、昨年末『置かれた場所で咲きなさい』の著者、渡辺和子さんが89歳でお亡くなりになりました。

若くしてノートルダム清心学園の大学学長に任命され、ほどなく理事長になられた方です。

お父様は台湾軍司令官や陸軍教育総監を務めた渡辺錠太郎。

陸軍将校の一部らが起こした軍事クーデター「2・26事件」で、反乱軍の将校らに9歳の時に父親を目の前で殺害されるという、壮絶な人生を歩まれました。

 

私は6年ほど前に児童相談所で勤務をしていました。

 

車上生活で売春をしながら母親と生活していた女子。「何か悪いことしているの?」「どうしてここに居なけりゃならないの?」と叫ぶ声。

 

幼くして母親が亡くなり、仕方なく育てているアルコール中毒の祖父が飲みに行って帰って来なく、飲まず食わずで夜中に町中を祖父を探し歩いて、警察に保護されてきた4歳の女の子。

 

3歳で親に捨てられ親戚中をたらい回しにされ、人を信じることが出来なくなった姉弟。「保護司は夢や希望を持て!と何回も言うけど、そんなものどこにあるの?あるなら持ってきて!」とリストカットを繰り返す中学生の姉。

 

育児放棄された3姉妹。お風呂で洗っても洗っても垢が取れず、糞尿の臭いが4ヶ月経っても消えなかったこと。

 

書面では書けないくらい様々な事情で送られてくる子供たち。

目を覆いたくなる様な家庭背景と、2歳から17歳までの子10人程がひとつの保護施設で過ごし繰り返される時間と生活……。

そんな勤務の毎日で、私はどの様にこの子達と向き合えば良いのか、自分は何をしたら良いのか分からなくなり、答えを見つけられずに苦しんでいました。

 

そんな時、ふと立ち寄った書店でこの本を手にしたのです。

・「あなたが大切だ」と誰かにいってもらえるだけで、生きてゆける。

・何もできなくていい、ただ笑顔でいよう。

・境遇を選ぶことはできないが、生き方を選ぶことはできる。

・毎日を「私の一番若い日」を輝いて生きる。

・ほほえみを忘れた人ほどそれを必要とする人はいない。

等、本にある言葉のひとつひとつが心に染み、読みながら泣いていた自分がいました。

 

そんな頃、偶然に渡辺和子さんの講演会があることを知り、この機会を逃したらもう会えないかもしれないと思い、当直明けの日に、片道3時間以上の道のりを車を走らせ飛んで行きました。

 

壇上に立った姿は神々しくて、透明感のある優しい表情、でもその中に凛とした強さと美しさを感じたのです。

修道院でいじめや妬みで悩み「うつ」にもなり、色々な病気をされ、当時も完治しない病を抱えていらっしゃいました。

 

「咲くということは笑顔で生き、周囲の人々も幸せにすることなのです。咲けない日もありますが、『置かれたところで自分らしく生きていれば必ず見守ってくださる方がいる』という安心感が、波立つ心を鎮めてくれるのです。」

 

講演が終わる頃には、まるでシスターに抱きかかえられている様な安堵感でいっぱいになりました。

そして、何も特別なことをしなくとも良い、保護されている、心が泣き叫んだり傷付いている子供たちの背中をさすってあげよう…、何も言わずにただ、ただしっかりと抱きしめてあげよう…、一緒に思いきり笑おう…

子供たちが何処へ行くようになっても、その一時と温もりがあったことを思い出して欲しい。

そう思いながら帰路につきました。

 

心が安らぐ『置かれた場所で咲きなさい』……一読してみて下さいませ。